動きと声の連動がテーマ

声優として演じるときは、まず、キャラクターがどういうふうにしゃべるかイメージを膨らませます。キャラの骨格から見て、この骨格だったらこういう声帯をしていて、こういう音の響き方をして、こういう風にしゃべるだろうなと想像します。自分の声色を調整するというイメージはありません。キャラのしゃべり方の特徴や息を吸うテンポ感を妄想します。 

一方で、俳優は自分の肉体がキャラクターになります。自分の動きに合わせて連動していく音、しゃべり方が正解だと考えました。声優だから声を作るとか、狂歌を詠むときにはいい声で、とかは意識しませんでした。芝居のなかで自然に生まれてくるものを出すようにしています。声と動きの連動は自分のなかでもテーマです。声先行になってしまいそうになるので、どういうふうに動きとひもづけていくかすごく考えています。目線の動き、まばたき一つ、すべてに意味が出てしまうので、なんて難しいんだろうと改めて痛感しました。

撮影が始まったころ冬場で現場が乾燥していたので、テストのときに無意識のうちにセリフをしゃべりながらまばたきをパチパチしてしまいました。後で映像を見て、「うわあ、やってしまった」と反省しました。行動すべてに意味が出てしまう。頭のてっぺんから足の先まで一瞬たりとも気が抜けない。どういう風に動くか細部まで前もって考え抜いていかないといけないと思ったできごとでした。

俳優を経験することで、声優としての演技の引き出しも増えると感じています。キャラがまとう空気みたいなものをより声に載せていきたい。作品にもよりますが、ちょっとした息遣いや短いセリフでも、言葉を立たせるだけじゃない空気感をナチュラルに載せたいと考えています。