50代に入ってからは

――それにしてもコンスタントに作品を発表していくのは大変なことだと思います。

最初の10年くらいは無邪気に、書きたいものを書いてきた気がするんですよね。ただ、作品を重ねていくと、同じパターンは使えなくなって、そのことがかなりつらいです(笑)。50代に入ってからは特に、新しいアイディアはなかなか閃かないですし、難しいなあ、もう無理かな、という気持ちだったりもしたんですけど、奥さんが「50代の代表作を一作書ければいいんじゃない?」と言ってくれて、「ああ、それを目標にしようかな」と思ったら、少し楽になりました。50代はまだ何年かあるし、と。(笑)

『楽園の楽園』(著:伊坂幸太郎/中央公論新社)

今年の1月に作家デビュー25周年記念第一弾として発表したのが、初の中編小説『楽園の楽園』です。短い話なんですけど、長いお話のクライマックスだけを切り取った小説なんですよね。

それから、令和7年度版 中学校教科書『国語2』に、「ヒューマノイド」という書き下ろしの小説が載ることにもなったんですよね。まさかそんな仕事を依頼してもらえるとは思ったこともなかったですし、デビューしてから最も大変な仕事でしたけど(笑)、無事に書き上げられてほっとしています。

最近の悩みはもっぱら体が本当に弱っていることで(笑)。運動不足のせいもありますし、腰は痛いですし、長時間立っていられないですし、胃腸の調子が悪かったり…もっと大変な人はたくさんいるでしょうからこれくらいで弱音を吐いたら怒られそうですけど、やっぱり生きるのは大変だなあ、と思っちゃいます。最近は、「体が悪いんじゃなくて、僕が悪いんだな」みたいな気持ちになってきて、この体を使わせてもらっている感覚になってきたからか、自分の体に「今まで雑な扱い方してきてごめんね」と語りかけたくなってきました。威勢のいい話題じゃなくて申し訳ないです。(笑)


『パズルと天気』(著:伊坂幸太郎/PHP研究所)

伊坂幸太郎デビュー25周年に贈る、「幸せ」な短編集!
【パズル】
悩みを抱えた「僕」は、マッチングアプリでしか出会えない「名探偵」に依頼する。
【竹やぶバーニング】
出荷した竹にかぐや姫が混入!? 仙台七夕まつりで大捜索が始まった!
【透明ポーラーベア】
動物園で会ったのはシロクマ好きで行方不明になってしまった姉の、元恋人だった。
【イヌゲンソーゴ】
花咲か爺さん、ブレーメンの音楽隊……俺たちの記憶を刺激するあの男は誰だ?
【Weather】
友人・清水の結婚式に参加した大友は新婦からある相談を持ち掛けられていて――。