「一生かけて償う」

判決は「清算業務を担当する立場を悪用し、計画的に犯行に及んだ」と指摘し、懲役9年の実刑を言い渡した。「一生かけて罪を償います」と法廷で述べていた男は判決を静かに受け入れた。

確かにビットコインが反発するという男の読みは見事に的中した。事件後に米連邦捜査局(FBI)が押収し返還されたとき、当初の約168億円は約221億円まで膨らみ、運用益は約53億円に及んでいた。

資金が増えて戻ってきたソニー生命は、これを機に犯罪防止や被害者救済などへの寄付を始めた。入社前、契約者を守ることがモットーとの先輩社員の言葉に感銘を受け「自分も社会貢献したい」と思って同社を志望した男。結果的に運用益を稼ぎ、寄付に貢献したのは皮肉というほかない。

※本稿は、『まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(日経BP)の一部を再編集したものです。


まさか私がクビですか? ── なぜか裁判沙汰になった人たちの告白』(著:日本経済新聞「揺れた天秤」取材班/日経BP)

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