〈リアルで複雑な家庭像〉をどう作り上げたのか

――今作品は、タイの華僑の文化や風習が取り上げられていますが、それは監督のルーツからですか?

ええ、私は自分が一番よく知っているタイプの家族のことを、自分の初監督作品のテーマにしようと思ったんです。

――日本も家長制度があったので習慣としてはわかる部分もあるのですが、タイの華僑では、大家族で住んでも財産は長男が相続して、他の人には保証されないものなのですか?

そうです。(タイの華僑の風習では)ほとんどの家族が長男だけが貰い、後については決まっていません。ただ、現在は少しずつ変わってきてはいます。
実は、この映画が公開された際、映画を切っ掛けに、「実際、こんなあり方でいいのか」という議論が起こりました。

日本文化にも造詣が深いパット監督

――一方で、映画を拝見すると、おばあちゃんの子どもたちが、必ずしも母親を嫌っているわけではないこともわかります。ネタバレになるので詳細は避けますが、心配したり思いやったりしている様子も伺えます。
このような〈リアルで複雑な家庭像〉をどうやって作り上げたのですか?

すごくいい質問ですね。最初に脚本を書いた当初、ストーリーはこんなに複雑ではなかったんです。でも、だんだん書いているうちに、それぞれの人物もどんどん深堀りしていくようになり……やがて彼らの心の深い部分まで観客に知ってほしいと思うようになりました。

エムはお婆ちゃんに気に入られたい一心で…。映画『おばあちゃんと僕の約束』より