〈実際の経験〉を聞きディティールに生かす

――先にキャラクターがあり、彼らの人物像を追求していった結果、ストーリーに影響したのですね。

キャラクターの心情を知ってもらうために、ストーリーもどんどん深堀りしました。 例えば、この映画は、表面的に見ると、「孫が財産を狙って、おばあちゃんの世話をする」という話にしか見えないですけれども、実際に家族のメンバーがそれぞれにどんな考えを持っているのか?誰が善い人で誰が悪い人と、一概には言えないのです。そういったことを丁寧に描いていたときに、このような家族の構造ができあがってきました。

――リアルなキャラクター像でいうと、若者の姿もですね。エムがスマホでおばあちゃんの画像を遊ぶシーンや、学校を退学してゲーム実況者をしているシーンなど、「こういう若者いるよなぁ」と思わされます。監督はテレビシリーズの「バッドジーニアス」の時から、10代の若者の描写が巧みですが、その秘訣を教えて下さい。

どんな作品を撮るときも、私は登場人物に近い実在の人にかなり綿密にインタビューをし、その内容を作品のディティールに生かしています。彼らがどんな人生を送っているのか、〈実際の経験〉を聞くのです。

――リサーチ力と観察眼の賜物ですね。そして、今回は、一番身近な部分からテーマを決めた、と。繊細で複雑なストーリーの秘密が少し覗けた気がします。

服のボタンを締めるか締めないかでやり取りする2人。映画『おばあちゃんと僕の約束』より