「ちょっといい話」あの家のセットの中には…
――素敵ですね。映画の中では、家の中も本当にリアルで、年月を重ねているかのようでした。小道具など……家の内側はどういう部分に気を付けて作ったのですか?
もともと置いてあったものが素敵だったので、活かすことにしました。あの小道具の30%は実際にあの家にあったものです。他の部分については、プロダクションデザインを担当したファイさんと、どうすればセットをリアルに見せることができるか相談しました。
通常の映画であれば、古びた感じに見せたり、片付かない雑多な感じを演出します。ファイさんにどうするか聞かれて、私は「じゃあ、逆に脚本を見てどう思った?」と訊ねました。
ファイさんは、「自分の母親のことを思い出した」といい、このことが指標になりました。
実家を出てから大分時間も立つ中で、「母のことで思い出すのは、何でも取っておく人だったこと」だと言うのです。例えば、初めて買った古い自転車、初めての靴、子どもの頃の写真……みんな取っておきたい、子どものことを記録したいと思い、取っておいたというエピソードを教えてくれました。
――なるほど、このお話のおばあちゃんも同じなのですね。きっちりしていそうな方なのに、家の中のモノが多いのは、「メンジュさんが子どもたちの思い出の品を全て取っておいている」という設定に基づいて、物を配置したからということですか。
はい。「ちょっといい話」をしますね(笑)。よく見ると、あの家のセットの中には、ファイさんのお母さんが撮った「ファイさんの子どもの頃の写真」が紛れているんですよ。
ぜひ見つけてくださいね。
『おばあちゃんと僕の約束』
6月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
https://unpfilm.com/lahnmah/
【あらすじ】
大学を中退してゲーム実況者を目指す青年エム。従妹のムイが、祖父を介護したことで豪邸を相続したと聞き、自分も楽をして暮らしたいと画策。エムには一人暮らしの祖母・メンジュがおり、ステージ4のがんに侵されていることが判明。不謹慎にもエムはメンジュに近づき、彼女から信頼され遺産を得ようとする。しかし、メンジュの慎ましくも懸命に生きる姿に触れる中で彼の考えは変わっていく――。
【スタッフ】
監督 パット・ブーンニティパット
製作 ワンルディー・ポンシティサック ジラ・マリクン
脚本 パット・ブーンニティパット トッサポン・ティップティンナコーン
撮影 ブンヤヌット・グライトーン
編集 タラマット・スメートスパチョーク
音楽 ジャイテープ・ラーロンジャイ
エム プッティポン・アッサラッタナクン
メンジュ ウサー・セームカム
キアン サンヤー・クナーコン
シウ サリンラット・トーマス
スイ ポンサトーン・ジョンウィラート
ムイ トンタワン・タンティウェーチャクン
レインボー タジリヒマワリ