パット・ブーンニティパット監督(撮影:本社・奥西義和)
6月13日、いよいよ日本公開となるタイ映画『おばあちゃんと僕の約束』。ニートに近い生活をしているエムという主人公の青年が、メンジュおばあちゃんの遺産をあてにする、という設定です。一見不謹慎な動機で同居を始める孫と、受け入れたおばあちゃん、2人の関係を中心に、ありふれた家族の摩擦や問題、そして心温まる交流を、バンコクの美しい風景の中でユーモラスに描く、3世代の物語です。 今の時代ならではの笑いや切なさが絶妙に織り交ぜられた物語は、タイで若者を中心にSNSで拡散され大ヒットを記録。人気はアジアに広がり、更にはタイ映画史上初となるアカデミー賞国際長編映画部門にショートリスト入りも果たしました。今作が長編映画監督デビューとなるパット・ブーンニティパット監督に、作品に込められた思いを聞きました。 (構成:野辺五月 撮影:本社・奥西義和)

前編からつづく

「おばあちゃんと孫」の探し方
~キャスティングについて~

脚本を書いているときに意図したのは、自分の祖母と似たような性格の人です。口は悪いけれども、実は思いやりがあって、内面は優しい人なのです。
ところが、候補者を探すために、CM出演経験者や、助監督の知っている役者の一覧など考えられる限りの人物を当たったりしたのですが見つからず……最終的に、助監督の伝手で新人であるウサーさんに出会いました。

――助監督が関わったMVに出演するウサーさんを見て、オーディションに呼んだと伺いました。100人以上の候補者の中から選ばれて、今や「国民のおばあちゃん」となっているメンジュ役ウサーさんですが、「この人だ!」と思った瞬間、決め手になったエピソードがあれば教えて下さい。

オーディションでは幾つかのシーンを演じてもらうのですが、ほとんどの人が演じられなかったシーンがありました。それは、おばあちゃんを車椅子に乗せて、エムがおばあちゃんに「なぜ、エムに家をくれないのか」と言うシーンです。ウサーさんはこのシーンを見事に演じることができ、才能があるのだと思いました。

実は、おばあちゃん役のウサーさんに初めてお会いした時、本当にものすごく新人さんで、カメラ慣れしていないことに驚きました。私はスタッフとこっそり、「もし撮影中に、ウサーさんが急にカメラを見ちゃったら、面白いね」なんて冗談を言い合っていたほどです。それくらい初々しかったんですよ。
実際、撮影が始まると、彼女は本当にカメラを見ました。時にはカメラの向こうにいるスタッフやカメラマンをじっと見つめたりするんです。そこがまたウサーさんの可愛らしいところで、その「カメラ慣れしていない」感じが、かえって彼女の演技にとても自然な魅力を与えていました。私とウサーさんは非常に親しくなり、撮影後も彼女から電話がかかってきて、日々のことや健康状態について話をするような間柄です。(笑)

――まるで本当のお身内みたいですね。ウサーさんは78歳で、監督のおばあさまと同じくらいですか?

私の祖母は92歳で、とても元気です。……うん、第二のばあさんが出来た感じですね。