映画を観た祖母の感想はまさかの答えで

――タイでは家族ものは流行らない、と。では、流行っているジャンルはありますか?

正確な数字は分からないのですが、タイで作られている映画の大体70%から80%はホラー映画かホラーコメディ映画で、(そのシリーズものなどが)繰り返し作られています。

――ホラーがそんなに人気とは思ってもみませんでした。日本でも確かに家族ものは減ってきてはいますが……ちょっと事情が違いますね。作品の人気に驚く理由も分かりました。周囲の反応はさておき、今作は監督自身の”家族”像も反映されているということで、ご家族の方の反応はどうでしたか?

私の家族は完成披露試写会でこの映画を見てくれたのですが、上映が終わったのが22時頃で、普段ならば祖母はもう寝ている時間でした。だから終わった瞬間、私は祖母に駆け寄りました。私は、祖母が起きて、この映画を最後まで見てくれただけで嬉しかったです。
なお、すぐに携帯で動画を回しながら「映画どうだった?」と聞いたんですが……返事は「まあ普通」でした。(笑)

――まさかの?答えですね。

でも、母の方は、私がこの映画のためにどれだけ一生懸命頑張ってきたか、3年間この映画のことしかやってきていなかったことを知っていたので、見終えた後に私が行くと、泣きもせず、ただ黙りこんでいました。よく見ると、漫画にでてくるような、「目が点」状態でした。
後で聞いたら、どうも、その「普通」という意味は、自分たちの人生を見ているみたいなので、「こんな普通の話を他の人が見て面白かな」と疑って掛かっていたそうです。
そして、私が周りの評価や反応にがっかりしないか心配していたそうです。
そんな状況だったので、私が同じようにカメラを回して「どうだった?」と聞いても、母としてはうまく答えられず、楽しいとかいう勇気もなかったそうで……。またもこうです、「普通……」(笑)
先程もお話したとおり、タイではこんなタイプの映画がほとんど作られていないので、馴染みがないのです。日本ではあるでしょうから、日本の方は見てピンとくると思いますが。

――ホラーでもなく、事件もなく……ご自分たちの日常に近いから、「普通」なんですね。でもそんな「普通」がこんなにヒットして、みなさん吃驚されたのでは?

とっても驚いていました。何せ、完成披露試写の日はその後家族は帰宅して、私は、マスコミインタビューがあって後から帰ったのですが、午前0時をすぎたのに、家のドアを開けたらいつも寝ているはずの家族が食卓にみんな揃って座っていたくらいです。深刻そうな顔でシーンとしていていて……「この映画ヒットしなかったらどうしようか」本気で心配してくれてたという話です。
でもその後、たくさんの人が観にいってくれて、無事ヒットしたことを知り、今は安心してくれたみたいです。(笑)

ユーモラスで”普通”で、素敵なご家族のお話――本編のある種のモデルであるさまが伺える、パット監督の映画『おばあちゃんと僕の約束』は6月13日より全国の劇場で公開。


映画『おばあちゃんと僕の約束』ポスター
映画『おばあちゃんと僕の約束』ポスター

おばあちゃんと僕の約束
6月13日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
https://unpfilm.com/lahnmah/

【あらすじ】
大学を中退してゲーム実況者を目指す青年エム。従妹のムイが、祖父を介護したことで豪邸を相続したと聞き、自分も楽をして暮らしたいと画策。エムには一人暮らしの祖母・メンジュがおり、ステージ4のがんに侵されていることが判明。不謹慎にもエムはメンジュに近づき、彼女から信頼され遺産を得ようとする。しかし、メンジュの慎ましくも懸命に生きる姿に触れる中で彼の考えは変わっていく――。

【スタッフ】
監督 パット・ブーンニティパット
製作 ワンルディー・ポンシティサック ジラ・マリクン
脚本 パット・ブーンニティパット トッサポン・ティップティンナコーン
撮影 ブンヤヌット・グライトーン
編集 タラマット・スメートスパチョーク
音楽 ジャイテープ・ラーロンジャイ
エム プッティポン・アッサラッタナクン
メンジュ ウサー・セームカム
キアン サンヤー・クナーコン
シウ サリンラット・トーマス
スイ ポンサトーン・ジョンウィラート
ムイ トンタワン・タンティウェーチャクン
レインボー タジリヒマワリ