日本人夫婦と米国人夫婦の違い

日本と対照的なのは米国である。米国対象の調査は2010年にしか行われていないが、米国人夫婦にとっては、日本人夫婦とは大きく異なり、生活上の困難を上回って当人同士の関係が円滑かどうかに不安が集中している結果となっていた。

世界の家族関係について実地調査を行った著名な社会人類学者である中根千枝氏によると、親から独立した小家族を古くから理想としてきた米国では、家族の中で夫婦関係は何よりも優先されるべき関係だという信条に立っており、夫婦関係は「夫婦自身の子供ですら遠慮する関係」といわれる(『家族を中心とした人間関係』講談社学術文庫、129頁)。だから、ここで見られるように、夫婦同士がうまくいくかは、大変な心配であるようなのである。

米国人が、大事なことを最初に妻あるいは夫に相談し、意見が食い違って夫婦関係が壊れるなんてことは避けたいと思うのが当然である。従って、図1のように、気軽に夫婦が相談しあうというようなことにはならないのであろう。言い争いになったとして最も関係が壊れにくい母親への相談が多くなるのもうなずける気がする。米国人にマザコンが多いからではない。お互い構えることのない空気のような存在が理想であるような日本人の夫婦関係とは対極的なかたちだといえる。

つまり、米国人夫婦は、必ず仲良くしなければならないと思うから夫婦間に問題がいろいろ生じるのに対して、日本人夫婦はそう仲良くしなくともよいと思っているから、結果としてトラブルも生じにくいのであろう。「夫婦喧嘩は犬も食わない」ということわざは英語にはない。

※本稿は、『統計で問い直すはずれ値だらけの日本人』(星海社)の一部を再編集したものです。


統計で問い直すはずれ値だらけの日本人』(著:本川裕/星海社)

日本人は世界でも変わっている、とはよく言われる。しかしデータを丹念に調べたとき、どのような意味で「はずれ値」なのか。

膨大な統計データを収集・分析し、社会経済動向を追い続ける伝説の統計サイト『社会実情データ図録』の管理人である著者が、「日本人」を真正面から分析したのが本書である。