「お雪」はまたやりたかった役

とはいえ、何年か離れていたから新しいことにチャレンジするよりは、前にやったことがあるもののほうがいいかなと思って、前にやらせていただいた朗読劇のプロデューサーに「またやらせていただくのは可能でしょうか」と私から連絡をとったんです。

とんとん拍子で話が決まって、この夏、朗読劇『燃えよ剣~土方歳三に愛された女、お雪』の再演が決まりました。この作品は、2013年の初演以来、何度か再演してきました。私はもともと飽きっぽいところがあるので、再演はあまり好きではなかったのですが、このお雪は、なぜかまたやりたかったんです。

『燃えよ剣』は司馬遼󠄁太郎さんの名作で、激動の時代に生きた土方歳三が主役ですが、「お雪」という女性は、司馬遼太郎さんの創作で歴史上の人物ではないのね。剣の達人で非情の人と言われた新選組の土方歳三がどういう女性と恋に落ちたのか、彼のプライベートな部分をお雪の視点から語っていきます。土方のプライベートな部分、素の部分を感じてもらえるとうれしいです。

4歳のときに子役で初めて舞台に立ったのですが、みんなに褒められてそのころから女優になりたいと考えていたような気がします。華やかな世界に憧れていたんですね。父(十朱久雄氏)は麻問屋の長男でしたが、祖父がとっても道楽者で義太夫やお芝居を観るのが大好きだったそうです。その影響で父も学生のころからお芝居にはまって、俳優になること以外は考えていなかったみたいです。私が生まれてすぐに麻問屋の工場がある奈良に一家で移り住んだのに、先に東京に戻っちゃったんです。

私は奈良の西大寺というお寺の境内が遊び場で、木登りは男の子にも負けないぐらい!田舎で伸び伸び育てられたのは幸せだったと思います。両親が東京出身なので家の中では標準語でしたが、当時、お友だちとは関西弁で話していました。あの頃の言葉って、体が覚えてるんですね。 関西弁の役が来たときには、方言指導を受けなくてもちゃんと違和感なくネイティブの関西弁をしゃべれていました。一口に関西弁といっても、大阪、京都、奈良など土地によって微妙に違うのですが、その辺も演じ分けることができてたんですよ!

東京に戻ったのは小学校4年のときです。父が映画に出るようになっていたし、母も映画やお芝居が大好きだったから、歌やバレエを習ったり、銀座に映画を観に行ったり、楽しく過ごしていました。ディズニーもたくさん見たし、ミュージカルも大好きでした。

(撮影:本社・奥西義和)