恵まれた女優人生を歩んできた
女優としての本格的なデビューは、NHKの連続ドラマ『バス通り裏』です。
ちょうど高校に入学した年に始まって5年続きました。生放送でしたから、きっと大変だったのでしょうが、高校生の役だし、そのままの私でいいと言われていたし、もしかしたら遊び半分で楽しい現場に通っていたかもしれません。『バス通り裏』で私が演じた元子さんが人気者になり、私も「明るくて楽しいお嬢さん」というイメージから抜け出すのは少し苦労しました。有名になったおかげで映画にも使っていただけるのはありがたいけれど、いつも明るくてやさしい娘さんの役なので、大人の役が回ってこないんです。同じ世代の女優さんたちが大人の役どころにチャレンジしているのを見て、どうすれば大人の役をもらえるんだろうと悩んだと思います。忘れちゃったけど…(笑)。ただこのままじゃいけないなと思ったことは覚えています。
20代後半は舞台の経験を積むことができました。最初は、着物の所作さえよく知らないままだったんです。テレビや映画でアップになることには慣れていたから表情を作ることはできたけれど、舞台の上での立ち振る舞いは身に付いていなかったんですね。これでは舞台ではやっていけないと思って、日本舞踊を教わりにいき、必死でお稽古しました。名取もいただいて、ようやく気持ちに余裕ができました。
32歳で芸術座で座長を務めました。史上最年少と言われていましたが、芸歴としては長かったんです。もうこのころは、女優の道を突き進んでいましたね。
私は劇団にも入っていなかったし、師匠がいるわけでもなく、とにかく自分で自分を道を切り開くしかないので、必死でした。今にして思えば、大先輩の女優さんからも、細かいことをたくさん教えていただきました。山田五十鈴さんや奈良岡朋子さんという先輩方が、時間をとってちゃんとアドバイスしてくださったんです。本当にありがたいことですよね。私は恵まれた女優人生を歩んできたと思います。