映画監督志望から俳優の道へ

そもそも、僕は最初から俳優を目指していたわけではなく、学生時代は映画監督になりたかったんです。映画には、わりと幼い頃から親しんでいたと思います。

父の仕事の関係で1歳から小学2年生までインドネシアのジャカルタに住んでいたのですが、その頃、母がよく映画館に連れて行ってくれましたね。僕は本を読んだり絵を描いたり、ひとり遊びが好きなおとなしい子どもだったので、休日になると、父が活発な兄をプールに連れて行き、母が僕を映画館に連れて行くという生活でした。

本格的に映画にはまったのは帰国した後です。中学生の頃は『ローマの休日』など昔の映画を観るために名画座に通い、高校生の頃はジム・ジャームッシュ監督やスパイク・リー監督など、いわゆるミニシアター系の映画を観て「カッコいい!」と憧れて。

それで自分も映画監督になりたいと思い、映画を学べる大学を探したのですが、当時はまだ少なかった。もう少し範囲を広げて、演劇でも映画づくりの勉強になるかもしれないと、明治大学文学部の演劇学専攻を志望しました。

でも、いざ入学してみると演劇史を学ぶ授業が多く、いまいち身が入らなかったんです。それなら映画を撮ろうと思い立ち、脚本を書こうとしたら一文字も書けなくて……。当時の僕は、自分が何を好きで何を撮りたいのか、焦点が定まっていなかったのでしょう。