妹と弟の妻が相続権を主張

百箇日も終わらないうちに、妹と弟の妻から連名で内容証明郵便がDさんに届いた。あとからわかったことだが妹は、幼なじみで近くで小さな美容室を営んでいる同級生に頼んで、実家の状況をことあるごとに知らせてもらっていた。大改築が終わって繁盛していることも、父が地域の商店振興会の集まりで倒れて亡くなったこともキャッチしていた。

弟の妻は再婚していたが、弟が事故死したときに懐妊していた。男児を出産して、連れ子として再婚したのだ。元々、妹と弟は仲が良かった。弟の死後も弟の妻は、妹と連絡を取り合っていた。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

内容証明郵便には、妹と弟の子供(まだ未成年者なので弟の元妻が後見人となっている)には、父の財産の相続権があるので主張する。両名は、旅館の第三者への売却を考えている、という旨が書かれてあった。

旅館の所有者は、父親であった。いくらDさんが頑張って繁盛させ、そうやって稼いだ資金で大改築ができたのだとしても、旅館は所有名義人である父の遺産であった。遺言書はなかったので、Dさん、妹、弟の子に3分の1ずつの相続権がある。妹は外国人と婚姻して海外在住であったが、それは影響しない。弟は亡くなっていたが、弟の子供は代襲相続(弟に代わって弟の相続権を受け継ぐこと)ができる。弟が亡くなった時点で胎児であってもかまわない。弟の妻が再婚したことも影響しない。弟の妻は、御丁寧にも弟と子供のDNA親子鑑定までしていた。