「教育は善をなすことが、成功につながる幸せなビジネス」と語るのは、通信制高校・N高等学校の設立メンバーである株式会社ドワンゴ顧問の川上量生さん。N高校は、従来の通信制高校のイメージを覆し、在籍生徒数日本一の通信制高校として海外、東大、芸術系大学など多彩な進学実績を誇っています。そこで今回は、2025年4月に開学したZEN大学の立ち上げにも携わった川上さんの著書『教育ZEN問答-N高をつくった僕らが大学を始める理由』より一部を抜粋・再編集してお届けします。
社会人ばかりの通信制大学
現在日本で通信制高校と通信制大学に通う人の数を比べてみましょう。
通信制高校に通う生徒数は、2024年度のデータによると約29万人ですから、1学年に9万人以上いる計算になります。それにもかかわらず、通信制大学に進学する高校3年生は2000人程度しかいません。中学3年生から通信制高校に入学する生徒は、かなり一般的になってきましたが、高校3年生から通信制大学に進学する学生は、まだまだ、とても少ないのです。これでも通信制大学への進学者は急激に伸びていて、平成時代は500人もいなかったのです。
どうして、こんなに少ないのか。現状、通信制大学は高校からの進学先として認識されていないからです。実は放送大学や他の通信制大学の多くは、社会人が学生の8割から9割を占めているのです。
この状況は、かつての通信制高校と似ています。日本の通信制高校の生徒数は、N高が設立されるまでは約10年間横ばいでしたが、設立されてから急激に増加し、現在では3学年で約29万人に達しています。
特にN高以降に変わったのは、中学3年生から直接に通信制高校に進学する生徒が急増したことです。それまでの通信制高校は、全日制に通えなくなった生徒が高校を退学して、途中からやむを得ずに入学するケースが多かったのです。しかしN高は、「自分から進んで選ぶ通信制高校」という新しい概念をつくり上げました。その結果、中学を卒業して直接に通信制高校に入学する生徒が増えたのです。
同じように僕たちは、社会人の学び直しのためではなく、高校を卒業して当たり前に進学するオンライン大学をつくることによって、通信制大学の状況も変えたいと考えています。