ピンピンコロリは幻想

そうした風潮に対して、「ピンピンコロリは幻想です」ときっぱり言うのは、福祉学者・社会学者の春日キスヨさんです。

春日さんは、著書『百まで生きる覚悟』(光文社新書)で、ピンピンコロリで逝く人はそんなに多くはない、多くの人はピンピンとコロリのあいだに、ヨロヨロ、ヘロヘロという段階があり、ドタリと倒れ、それから年単位で寝たり起きたりという期間が待っているとおっしゃっています。

樋口恵子
樋口恵子さん(2021年9月撮影。写真:本社写真部)

なるほど、わが身を振り返るとそのとおり。特に80歳を過ぎてからはヨロヨロを通りこし、歩いてはヨタヨタ、階段の上り下りでヘロヘロ。オットットと転ぶことも多くなってきました。深く納得した私は春日さんの「ピンピンコロリは幻想だ」という証明を、これまでも老いの実況中継で伝えてきました。

日本人の死亡原因を見ても、がん、心疾患についで多いのは老衰。老衰はゆっくり体が衰えていくことです。ということは、多数派の人がピンピンとコロリのあいだの、ヨロヨロ、ヨタヨタ、ヘロヘロをゆっくりと歩んでいかなければならないのです。