特に捨てられなかったのは……

特に捨てられなかったのは本です。

たとえば若い時期、小さな本を一冊書くために、資料となる本を買い集めたことがありました。

『93歳、あとは楽しげに生きる ヨタヘロな私の心得69』(著:樋口恵子/講談社)

参考になった本もあれば、あまりならなかったものもあります。この先必要になるものはほとんどありません。

けれど、これから評論家として世に出ようと、懸命に取り組んだ証拠物件なのです。

それらを捨てることは、自分の人生を捨てることなのです。