(写真提供:Photo AC)

気分転換のコツ

介護を通して、本当にいろいろなことを学びました。

一つはやっぱり、上手な気分転換の方法。気分転換は、時間ができたときにたっぷりまとめてではなく、“小刻み”がいいんです。

夜食を作りながらのほんのちょびっとのワインだったり、ちょっと用事を済ませるために電車やバスに乗ったり。そんなひと時がすばらしいの。

電車って、まるでガラス張りのお部屋だなあって思いませんか? 混雑していても、心の中でそのイメージさえ持てれば全然気にならない。実家のあった場所から都心に出るには、結構長い時間、電車に乗らなければなりません。人によっては、それを不便と思うかもしれない。でも私は、ただ電車に乗っているだけで、風景が次々と変わっていくのがまるで楽園みたいだと思って、気持ちよかったんです。

バス停から家までの帰り道、木の枝の間に夜空の星が見えて、まるで木に星が咲いているみたいでした。木の下には野良猫、見上げれば星空。そんななんでもない景色がなぐさめになるのね。

覚えたての歌を口ずさんで帰れば、それだけですっかり元気になれました。

母はテレビを大音量でずっとつけっぱなしにしている人でしたが、おむつを替えながら、ふだん見る機会のない夜中の旅番組に見とれてしまったり、ラジオ、テレビからふと聞こえてくるすてきなフレーズが心に飛び込んできたりして、それだけでうれしい。「大きな音でうるさいな」と思ってしまったら、イライラするだけでしょ?