人生は計画どおりにはいかないことも多いものですが、87歳のイラストレーター・田村セツコさんは、「どんなときでも、ピリピリした緊張感を持たずに生きていけたら」と話します。今回は、田村さんの著書『田村セツコの私らしく生きるコツ 楽しくないのは自分のセイ』から一部を抜粋し、毎日がきっと楽しくなる、自分らしく生きる秘訣を紹介します。
実家で母の介護をすることに
ある日、家で転んでこれはいよいよ入院するしかない、となったのですが、母は「絶対に病院は嫌だ」と言い張りました。父は88歳のとき、病院で亡くなったのですが、そのときの経験から、自分は絶対に病院では死にたくない、と思っていたみたいなんです。
いろいろ話し合いましたが、母の意志が固かったので、「OK、じゃあ私が介護をするわ」と言ったのがきっかけで、実家で母の介護をすることになりました。
私が68歳のときのことです。
実家のあった地域は福祉サービスが充実していて、週に2回、ヘルパーさんがお手伝いに来てくださいました。
バスタブを持ってきて、しぶる母を入浴させてくださったり。その合間に、「郵便局に行ってきます!」と言って、原宿の仕事場までピュッと出かけたりしていましたね。
ヘルパーさんはすばらしく、一日2時間、とても助かりました。
母も、身内じゃない人に接することで少し緊張する、それがとてもいいのです。ちょっとだけ、よそゆきの態度をとるのがほほえましく、ヘルパーさんも話をよく聞いてくださる聞き上手さんばかり。テキパキ、クールに仕事をこなせない、あまり慣れない奥さま風の方もいらして、それがまた、あたたかい雰囲気になって、今こうして思い返しても感謝の気持ちで胸がいっぱいになります。