血が騒いだ?

<第25回では、浅間山の噴火で江戸市中に灰が降り積もった。日本橋・通油町のために、蔦重はみんなで灰を捨てる競争を提案。日本橋の本屋のために、困難な状況を明るく乗り越えようとする蔦重の姿に、ついに鶴屋も心を許して笑顔を見せた>

(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)

最初に台本を読んだときに、鶴屋が灰捨て競走に参加するのが意外でした。鶴屋は、本屋業界の利益になることをやってきた。蔦重の提案で本屋の立ち並ぶ通油町の士気が上がった瞬間に、「良いことだからやってもいい」となった。

だけど、蔦重の提案というのはよくない。だから、鶴屋が賞金を出すという形で乗ったんだと思います。上方がルーツといえど、鶴屋は江戸で暮らしているので、「勝負を前に抑えきれずに血が騒ぐ」という「江戸の粋」みたいな部分が実はあったと解釈して演じました。

灰捨て競走では、高下駄を履いて走りました。痛かったですね。店が近いから(草履に)履き替えたらいいのに、下駄で走る。だから、まあ遅い!

ただ、これが現代で、僕が鶴屋のような人間だったら、革靴を履いていたのに競争すると決まった瞬間にスニーカーを履いて登場することはない。「こんな競走気にしていません」という雰囲気を出す。けれど、いざ走り出したら絶対に負けたくないというのが鶴屋だと思いました