江戸のメディア王として、日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築いた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。江戸市中の地本問屋のリーダー的存在、鶴屋喜右衛門を演じるのが、俳優の風間俊介さんです。鶴屋は、蔦重や吉原を敵視し、蔦重が吉原で営んでいた板元(はんもと)・耕書堂が日本橋に進出しようとするのを阻止しようとしてきました。しかし、第25回で浅間山が噴火。江戸に大量の灰が降ってくると、蔦重は、本屋の立ち並ぶ日本橋・通油町のために灰の処理を懸命に行ったのです。鶴屋はついに蔦重を認め、和解。日本橋の本屋の娘、てい(橋本愛)と蔦重の結婚を祝福しました。「憎たらしい」「笑顔が怖い」とSNSでも話題の鶴屋をどう演じてきたのか、風間さんに聞きました。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
原点回帰の感覚
30代では、人に寄り添う役をたくさんやらせていただきました。でも、10代や20代のころは、どちらかというと悪い役というか、何かを抱えて一筋縄ではいかないような役が多かったです。
だから、鶴屋の役は原点回帰、「帰ってきたぞ」という感覚でした。「悪い人のイメージがなかった」と言ってくださる方と「今までも悪い役をやっていたよね」と言ってくださる方の両方がいる。見てくださる人によって「風間とは」のイメージが全く違うのが面白いですし、どっちの役もちゃんとできたのかな?と思えました。
地本問屋としての鶴屋のルーツは上方です。江戸を任されているのが、鶴屋喜右衛門さん。ルーツが上方なのでほかの登場人物のように「べらんめえ口調」が、一切出てこない。
堅物ではないけれど隙がなく、感情があまり表に出てこないスタイリッシュなイメージです。江戸の粋って、ちょっとわい雑な部分がある。鶴屋は江戸の粋みたいなものの枠から外れたキャラクターだと認識しています。
第8回では、蔦重の育ての親であり、吉原で客に女郎を紹介する引手茶屋を営む駿河屋(高橋克実)から、「赤子面!」といわれて階段から突き落とされました。
(脚本の)森下さんの言葉選びが素敵だなと思いました。赤子面って「ベビーフェイス」ですよね。当時、赤子面という言葉が使われていたかどうかは分からないけど、「赤子面」がパワーワードすぎて、放送されると大きな反響がありました。