警察庁の発表によると、令和6年に自宅で死亡した一人暮らしの人は7万6020人でした。孤独死する人が年々増加傾向にあるなか、文筆家の門賀美央子さんは、「ひとりっ子親なし配偶者なし子なし」の人が「いかに部屋で腐らず、綺麗に人生を閉じるか」について指南しています。今回は、門賀さんの著書『死に方がわからない』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。
横須賀市では2000年前後を境に……
市の統計資料によると、現在、単身世帯は全体の3割を占めるという。さらに高齢者の単身世帯は2万に上るそうだ。また、高齢者のいる核家族は7万7千ほどだそうだが、それらはすぐにでも単身世帯に変化する層であることはいうまでもない。試算によると 2040年には4割が単身世帯になるとみられている。
総人口が40万弱の都市でこの数字は、なかなかのインパクトだ。
こうした中、横須賀市では2000年前後を境に、単身者の死亡後、その遺骨の引き取り手がいないケースが急増した。直近では年間50件ほどのペースが続いているという。
そう聞くと「やっぱり人と人の関係性が薄れているのねえ。親族っていっても当てにならないわねえ」と短絡的に考えてしまいがちだが、最大の元凶は携帯電話やスマホの普及らしい。
その昔、昭和から平成の初め頃まではみんなアドレス帳なんてものを持ち、そこに緊急連絡先や友人知人の電話番号を控えておいたものだった。しかし、携帯電話やスマホの普及によって情報は端末内に収められるようになった。結果として、個人情報は漏れづらくなったわけだが、それがいざとなると仇になる。
つまり、単身者が死ぬ → 身元は判明する → だが親族や友人に連絡を取ろうにも連絡先が入っている端末にロックがかかっている → 昔と違ってアドレス帳などのアナログな記録がない → 身元はわかるけれども引き取り手がわからない、という図式に陥ってしまうらしい。また、本人はしっかり終活をして、葬式や身辺整理の生前契約を結んでいたにもかかわらず、それを誰も知らなかったがためにすべて無駄になったケースもあるそうだ。私が危惧していた事態は実際に起こっているのである。