NHK専属テレビ女優第一号として、テレビとともに歩み続けてきた黒柳徹子さん。MCを務める人気番組『徹子の部屋』は、2025年で50年目に突入しました。今回は、そんな徹子さんが人生のさまざまな場面で励まされてきた「あの人たちの言葉」で半生を振り返る自叙伝『トットあした』から、一部を抜粋してお届けします。
支えになった言葉
ときおり、色紙や私の本などにサインを頼まれて、「よかったら、お名前と一緒に、徹子さんの〈座右の銘〉も書いてくれませんか?」なんて言われることがある。
そう言われても、私は座右の銘と呼べるような、生き方の指針とか、人生の目標とかにするような、立派な言葉を持っているわけではないから、いつも困ってきた。でも、たしかに、色紙に「黒柳徹子」とだけサインしてあるのも、見た目がちょっとさびしい気がして、いつの頃からか、座右の銘の代わりに、名前の隣りへ「愛をこめて!!」と書き添えるようになった。いつも同じで、それも何だか芸がないようだけど、もちろん嘘の気持ちではないのだから、ずっと、この言葉を書いている。
だけど、これは私が、「座右の銘って、ひとつだけよね」とか、「うんと昔の偉い人の言葉じゃなくちゃ」とか、そんなふうに思い込んできたせいかもしれない。
例えば、私がトモエ学園へ通い始めたころに(まだ6歳だった)、校長の小林宗作先生から、
「きみは、本当は、いい子なんだよ!」
と言われたことや、NHKのラジオドラマ「ヤン坊ニン坊トン坊」のオーディションに合格したときに(そろそろ21歳になろうとしていた)、劇作家の飯沢匡先生に、
「直すんじゃ、ありませんよ。あなたの、そのままが、いいんです!」
と言われた記憶は、どれだけ、私の救いや支えになってきてくれたか、わからない。ああいった言葉を、何と呼べばいいのだろう?