エノコログサの総苞毛はカメムシを避けるためのもの

別の日、稲垣教授と瀬戸田くんが教員室に戻ったときのことだ。

瀬戸田くんが、声にならない声を上げた。

「む……虫……」

来客用のテーブルの上には、水槽が置かれていて、大量のカメムシがうごめいている。

「今度は何かね」

稲垣教授の質問に、作業をしていた出雲さんが応えた。

「カメムシが紫色の穂を避けるんじゃないかと思ったんです」

エノコログサの総苞毛はカメムシを避けるためのものである。そうだとすれば、カメムシに対する防御力に違いがあるのではないかと推察したのである。

水槽の中には、大量のカメムシとともに、エノコログサの緑色の穂と、ムラサキエノコロの穂が二つずつ入れられていた。