大学に入ることは新たなスタートになっていく

入試の早期化は青田買いという批判もありますが、早稲田大学と東北大学では総合型選抜合格者の入学後の成績(4年間のGPA平均)は、他の入試形態の学生よりも上回っているという調査結果が出ています。

一方で、総合選抜型入試などの新たな入試形態は3年間をどのように過ごすのかが合否の鍵を握るため、家庭環境の格差が、学力一辺倒のペーパーテストよりも影響を与えるのではないかという懸念も存在しています。家庭の経済状況による経験格差の問題や、文化階層の差による非認知スキル習得への格差などを考慮すると、学力一辺倒入試のほうがある意味で平等ではないかという考えもあります。

とはいえ、多様な入試形態が増えることで、受験者が自分にとって最もパフォーマンスを出しやすい形式を選ぶことができるというのも事実です。また、大学に入学する目的意識が問われ、高大一貫した学びをおこなえる総合型選抜のような入試形態は今日の社会的要請に応えているとも言えます。

「大学全入時代」を迎えるなか、従来のような選抜機能が低下していくことは間違いないでしょう。大学に入ることはますますゴールではなく、新たなスタートになっていくのではないでしょうか。大学入学後にどのような学びを深めていくのか、まさに自分自身の歩みにもとづいたアイデンティティ形成という視点から選択をすることが求められています。

※本稿は、『教育ビジネス 子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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