いつかまた、樋口さんとお便りする機会が巡ってきたら、その時に書けることをまた何か書くかもしれません。
自分でも何を書くのか、どうなるのかは、わからない。
――まず、そこまで生きてみなければ始まらない。
電子的な機器といったものには、ついに、馴染めぬまま、自分は生を終えるのでしょうが、ペンと箸だけは、最後まで手に握っていたいものだと念じています。
二〇二五年五月
黒井千次
いつかまた、樋口さんとお便りする機会が巡ってきたら、その時に書けることをまた何か書くかもしれません。
自分でも何を書くのか、どうなるのかは、わからない。
――まず、そこまで生きてみなければ始まらない。
電子的な機器といったものには、ついに、馴染めぬまま、自分は生を終えるのでしょうが、ペンと箸だけは、最後まで手に握っていたいものだと念じています。
二〇二五年五月
黒井千次
1932年東京生まれ。東京大学文学部卒業。 NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。女性地位向上運動などのリーダーとして活躍、 介護保険制度創設に尽力。『老いの福袋』『老いの玉手箱』など著書多数。 2024年1月10日に最新刊『老いの上機嫌』を上梓。小誌にて「老いの実況中継」を連載中
1932年、東京生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、富士重工業株式会社に入社。会社勤めの中で小説を書き続け、69年、参加していた同人誌『層』に発表した小説「穴と空」によって芥川賞候補となるも受賞せず。70年、「時間」によって芸術選奨文学部門新人賞受賞。会社勤めを止めて文筆生活に入る。以降『五月巡歴』『春の道標』『群棲』『カーテンコール』『羽根と翼』『一日 夢の柵』他の作品を発表。最近作は2021年の『枝の家』。(写真提供:読売新聞社)