いつかまた、樋口さんとお便りする機会が巡ってきたら、その時に書けることをまた何か書くかもしれません。

自分でも何を書くのか、どうなるのかは、わからない。

――まず、そこまで生きてみなければ始まらない。

 

電子的な機器といったものには、ついに、馴染めぬまま、自分は生を終えるのでしょうが、ペンと箸だけは、最後まで手に握っていたいものだと念じています。

 

二〇二五年五月
黒井千次

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