海上自衛隊の人事制度は見直されてしかるべき
もっと言えば、海上自衛隊のトップである海上幕僚長の任期も2年程度と相場が決まっているといえる。これもおかしい。米軍では、陸軍、海軍、空軍、海兵隊のトップの任期は法律で4年と決まっている。戦争など国家緊急事態であれば、1回だけ任期を延長できる。これは4年というスパンでなければ、各軍の長期計画に責任を持てないからだ。
ちなみにいうと、自衛隊制服組トップの統合幕僚長は2014年以降、2代続けて在任期間が約4年となっている。それまでの統合幕僚長や、その前身である統合幕僚会議議長は2年が相場で、短い場合は2年に満たない場合も少なくなかったので、在任期間は長くなっていると言ってよい。
だが、米軍制服組トップの統合参謀本部議長の任期は2年だ。普通は任期を1回延長して在任4年というのが相場なのだが、法律で決まっているのは2年であり、これは陸海空軍と海兵隊のトップより短く設定されている。
その理由はおそらく、統合参謀本部議長は、長期的な整備計画にはかかわらない一方で、陸海空軍と海兵隊のトップは各軍の整備計画の責任者だからだ。日本の統合幕僚長は基本的に部隊を動かすポストだったが、統合作戦司令官の設置後は、米軍の統合参謀本部議長と同様に首相に軍事的アドバイスを行う一方、陸海空自衛隊の調整役ということになる。
もちろん、日本ではこの2年は暗黙の基準であり、その時の情勢により長短がある。ただ統合幕僚長の在任期間が長くなり、陸海空の幕僚長の任期が2年で順送りとなっている自衛隊の現状は、あべこべというか、本末転倒というか、非常におかしな状態になっているのだ。
ここまでの話をまとめよう。海上自衛隊の人事制度は見直されてしかるべきだが、これがなかなかうまくいかない。約2年交代でポストをぐるぐるとまわすのは、旧海軍から続いている慣行でもある。
これは何も旧海軍に限った話ではなく、旧陸軍やその他の中央省庁にも共通している慣行だが、旧海軍の伝統をひたすらに重んじている海上自衛隊にとっては、こうした慣行を見直すのも難しいのであろうか。旧帝国海軍の慣習に引っ張られ、令和の世になってまで戦闘部隊の現場にこうした人事制度を採用しているのでは、最強の部隊を作ることなど夢のまた夢である。