イラクの難民キャンプにて子どもたちと(写真提供:鎌田さん)

生きている間に好きなことをやるべし

僕は、シニア世代に足を踏み入れたら「ちょうどいい堕落」「ちょうどいいわがまま」を実践するのが、結果的に「ちょうどいい死に方」につながると思っています。

堕落というのはちょっと強い言葉だけど、「ちょうどいい」をつけると、許されるのではないか。「ちょっぴり駄々をこねる」と言い換えてもいいかもしれません。

僕は自分もそれを実践しようと、1910年代にヨーロッパで起きた既成概念をくつがえす芸術運動ダダイズムと駄々をかけて、「カマタの駄々イズム宣言」なるものを打ち立てました。

僕は子どもの頃、親に捨てられ、貧乏な家にもらわれて育ちました。まわりの友だちは、ほしいものがあるとおもちゃ屋さんの前でひっくり返ってねだったりしていましたが、僕にはそれができなかった。わりあい我慢して生きてきたのです。

でも56歳で病院勤めをやめ、自由な時間ができてから、「一度だけの人生なのだから、まわりに迷惑をかけない限り、好きなことをして生きていこう」と心に決めました。

現在77歳ですが、「これがラスト・ダダ」などといって念願だったオープンタイプのスポーツカーを買うなど、自分としては「ちょうどいい駄々っ子」を通しています。まぁ、妻からは「何回ラスト・ダダがあるのよ」と呆れられていますが。

生きている間に好きなことをやるのは大事です。絵本『100万回生きたねこ』の作者である佐野洋子さんは、乳がんが再発して病院で余命を宣告された帰りに、中古の自動車屋さんでグリーンのジャガーを見つけて、大根でも買うように「これください」と購入したそうです。まさにこれもラスト・ダダ。

自分がそれまで一生懸命生きてきたご褒美に、ラスト・ダダがあってもいいんじゃないかと思います。

後編につづく

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