戦国時代の女性の自害の手段

またこの記述は、戦国時代の武家の女性の自害の作法について重要な情報を提供してくれます。喉を掻き切ることが、女性の自害の手段として伝えられています。

「前代未聞の働き」という表現は、この出来事が特筆すべきものとして認識されていたことを示しています。

儒教的な倫理に従って義務として強いられたわけではなく、自発的に行った行為で、それが当時高く評価されていました。

このように、戦国時代の武家社会において、女性の自害は単なる死というだけでなく、武家としての矜持を示す重要な行為としてとらえられていたことがわかります。

とくに、高い身分の女性には、そうした規範に従った行動が期待されていたといえます。

※本稿は『戦国武家の死生観 なぜ切腹するのか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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