戦国時代の女性の自害の手段
またこの記述は、戦国時代の武家の女性の自害の作法について重要な情報を提供してくれます。喉を掻き切ることが、女性の自害の手段として伝えられています。
「前代未聞の働き」という表現は、この出来事が特筆すべきものとして認識されていたことを示しています。
儒教的な倫理に従って義務として強いられたわけではなく、自発的に行った行為で、それが当時高く評価されていました。
このように、戦国時代の武家社会において、女性の自害は単なる死というだけでなく、武家としての矜持を示す重要な行為としてとらえられていたことがわかります。
とくに、高い身分の女性には、そうした規範に従った行動が期待されていたといえます。
※本稿は『戦国武家の死生観 なぜ切腹するのか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『戦国武家の死生観 なぜ切腹するのか』(著:フレデリック・クレインス/幻冬舎)
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現代人の想像力をはるかに超えた、教科書には載らない戦国史
戦国時代の武士たちは、刹那的で激しく、常に死と隣り合わせで生きていた。合戦での討死は名誉とされ、主君の死や敗戦の際には、ためらうことなく自ら切腹を選んでいる。命より家の将来や社会的立場を重んじ、死を「生の完成形」と捉える死生観が、その覚悟を支えていたのだ。忠義と裏切り、芸術と暴力――相反する価値観の狭間で気高く生きた兵たちの精神世界を、鮮烈に描き出す一冊。