
いつも迎えの車が来る30分前から外に出ている…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは千葉県の70代の方からのお便り。高齢の方と待ち合わせをすると共通した行動が見られると本で読み、確かに思い当たることが――。
高齢者の時間感覚
遙洋子さんの本の中に、高齢の方と待ち合わせをすると共通した行動が見られる、という話があった。
「家に迎えに行くので待っていてください」と言うと、必ず玄関の外に出て待っているのだという。私の身近にも同じことをしている人がふたりいるので、納得してしまった。
ひとりは近所に住む男性。週3回デイサービスに通っているようだが、いつも迎えの車が来る30分前から外に出ている。直立不動で姿勢がよく、微動だにしない。その厳格な振る舞いに、「警察官だったのでは?」と夫は想像しているほどだ。
もうひとりは同居している私の母。嫁いだ私の娘が車で迎えに来て、母を病院やスーパーに乗せていってくれるのだが、そのときはいつも外で待っている。
遙さんの本によると、老齢になると、特有の時間感覚を持つそうだ。私も外で迎えを待つことこそないが、「誰かが迎えに来る」となれば、当日の朝起きた瞬間から、時間が気になってしまう。大袈裟に焦ることもあるし、身なりをきちんとして、家の戸締まりもしっかりする。
「準備は万全だ。さあ、いつでも来い!」という達成感のあらわれが、外で待つという行動なのだろうか。
だが、迎えに行く側としては、プレッシャーを感じることもあるだろう。その証拠に、前述の男性を迎えに来るデイサービスの方の第一声は、毎回「ごめんね、待った?」である。