季節を感じられる、庭の手入れ『80歳、私らしいシンプルライフ』より
元『装苑』編集長・徳田民子さんが、安曇野に移住して16年。「第2の人生」を自分らしく楽しむために、たくさんの物を手放し人生をリセットしていきました。たどりついたのは《シンプルって、心地いい》ということ。四季のはっきりした安曇野での暮らしやおしゃれの工夫、毎日をごきげんに過ごす秘訣などを語った、徳田さん初のエッセイ『80歳、私らしいシンプルライフ』より、一部を抜粋して紹介します。

実りが待ち遠しい!自然の恵みは余さず活用、野菜や果物で保存食作りにもいそしみます

安曇野でやりたかった庭の手入れや土いじり。特に夫は芝生や果樹のある広い庭を持つことが小さいときからの夢でしたので、気合いの入り方が違います。

もともと田んぼと雑木林だった土地を造成し、建てた家。庭には、木を選んで植え、芝を張り、ハーブや野菜、そしてあんずや柿などの果樹も植えて、二人で手をかけ、楽しんできました。

四季のはっきりした安曇野では、庭仕事は格別の楽しみがあります。

もちろん失敗もたくさんありました。いつか自家製ワインを作ってみたいと、知人からワイン用のぶどうの苗を譲ってもらい、20株ほど庭に植えたときのこと。

ぶどうは順調に成長して実をつけましたが、この地域に出没する猿に全部食べられて、栽培を断念。

ワイン作りの夢ははかなく消えてしまいましたが、試行錯誤しながら庭に向き合った時間は振り返れば、いとおしい記憶です。

今は、このときのこともあって畑や果樹は縮小していますが、それでも、ミョウガ、大葉、キクイモ、ラズベリーやブルーベリー、さまざまなハーブなど、自然に根付いたものも含め、庭は収穫する楽しみを私たちに与えてくれます。

そんな時期は朝からウキウキがとまりません。

「裏庭のミントをつんでフレッシュなハーブティー、クッキーに自家製のベリージャムをつけて。それとも、そば粉のクレープもいいかしら。午後のお茶に出しましょう、ふふふ」なんて、食いしん坊の私は朝から食欲満々。

お茶の時間は夫と「あのりんご園にはりんごがたくさん実っていたね。近くのそば畑は花が満開できれいだったね」とご近所の話題で会話が弾みます。