人生の中で大切なのは優先順位を決めること

今まで、その時その時に合わせた優先順位を定めて生きてきました。自分のやりたいことはいつも明確にありましたが、特に子育てに関しては「今は子育て第一で」と固く決めていたんです。あとになって「あの時、ちゃんと子どもと向き合っていたら」なんて後悔はしたくなかったから。

出産してからはとにかく必死でしたが、気づけば息子は成長していて、私の場合、これで子育ては終了したのだなという瞬間がハッキリとわかりました。息子の大学進学にともないサンフランシスコで暮らす寮の引っ越しを手伝った日のことです。引越しの後夕食を一緒に食べ、店の外に出た時に息子は「じゃあまた」と言ってさっさと寮へ戻ってしまいました。

その時、彼は自分の人生を歩み始め、私は今をもってお母さん業は終了したのだと悟ったのです。寂しいのか安堵したのか、自分でもよくわからない複雑な気持ちになって、泣きながらサンフランシスコの坂道を歩いてひとりホテルへ帰ったことを覚えています。

その息子も結婚し、今はアメリカで暮らしています。子どもも生まれ父になりました。もちろん孫は可愛いです。ものすごい勢いでご飯を食べて、床に落ちたものでも拾って口に入れる姿が豪快でカッコいいと思ったりもして。子どもはエネルギーの塊ですね。一緒にいると私までエネルギッシュになるのを感じます。人間って60歳も年の離れた人からも影響を受けるのか、と新たな発見でした。

今、私は日本で一人で暮らしなので、再び24時間を自分だけのために使えるようになりました。孤独な時間はありがたいですが、人は外側から刺激を受けることで変化できます。だからこそこれからも、いろいろな人との出会いを大切にしたいですね。