写真・南果歩
「過去にとらわれすぎず、大事なのは今だと、現在進行形で生きています」(撮影:本社・奥西義和)
1984年、小栗康平監督の映画『伽耶子のために』でデビュー以来、数々の映画やドラマ、舞台でコミカルな役柄からシリアスな役柄まで幅広く演じてきた南果歩さん。最新作はセドナ国際映画祭で「最優秀コメディ賞」に輝いた話題作『ルール・オブ・リビング』。ヒロイン美久子を演じた南さんに、本作への想い、そして作品を通して伝えたいことをうかがいました(構成:丸山あかね 撮影:本社・奥西義和)

『ルール・オブ・リビング』のあらすじ
49歳の美久子はバツイチのキャリアウーマン。ノーと言えない性格ゆえに職場では仕事を押しつけられ、一人娘は「お母さんみたいになりたくない」と言い放って海外へ。母の介護も重なり人生を楽しむことなど忘れていた。そんなある日、アメリカ人バックパッカーのヴィンセントが娘から紹介されたと美久子を訪ねてきて3か月間同居させて欲しいと申し出る。最初は拒絶するも厳密なルールのもとルームシェアを始め、言葉や文化の壁を乗り越えて少しずつ心を通わせていく二人。やがて美久子はルールに縛られない生き方に目覚めていくのだった。

ヒロインの美久子は日本人女性の象徴的な存在

監督のグレッグ・テールさんとは以前、二人芝居の舞台で演出家と演者としてご一緒したことがありました。時を経て、初監督作品となる本作を制作するにあたり、主演のオファーをいただいたんです。

脚本を読ませていただいて、アメリカ人男性から見た日本女性ってこういう感じなんだと思って面白かったです。奥ゆかしいのが日本女性の素敵なところである反面、自己主張できない弱さがあって、結果として不満を募らせている。シリアスになってしまいがちな部分なのですが、美久子の存在がコミカルに描かれていて強く心を惹かれました。

美久子は彼女なりに必死に生きていますが、どこか不器用で自分を上手く表現できません。周囲に振り回されても人前では我慢して、家に帰るなりビールをグビグビ飲みながら不貞腐れている。これって“あるある”と共感する人も多いのではないでしょうか。美久子はミドルエイジの象徴的な存在だという気がします。

観てくださる方の年齢や置かれた環境によってさまざまな捉え方ができる作品だと思いますが、私としては、本作はラブコメディーでありつつ、一人の女性が自律していく成長物語だと捉えています。