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今現在、医療の世界では、画像診断や創薬などで当たり前のようにAI技術が導入されています。その一方「今後この流れは加速し、診療や介護はもちろん看取りの場面まで、AIは欠かせない存在となる」と話すのが、東京科学大学特任教授の奥真也さんです。その先で医師の役割はどう変わり、日本の医療問題は解決に導かれるのでしょうか。今回その著書『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』から一部を紹介いたします。

診察ガイドラインの更新や評価が進まない日本

診療ガイドラインが現在の医療をどこまで正しくカバーしているかという検証も、将来的にはAIに任せるべきだと私は思います。

ガイドラインに記された治療法が臨床であまり効果を出していないなら、よりよい方法に見直されるべきですし、新しい薬や診断技術が登場した際には、それを反映すべきです。そうした作業はAIの得意分野であり、むしろAI主導で進めるべき領域です。

日本では1990年代以降、多数のガイドラインが編まれてきましたが、それらが妥当かどうかを体系的に検証する取り組みはほとんど行われていません。医師の多くは病気や臓器ごとの専門性に関心を持ちますが、ガイドライン全体の網羅性や有効性に目を向ける医師は非常に少ないのです。

一方、アメリカでは古くから「ガイドラインのためのガイドライン」も研究対象とされ、多数の専門家がその更新や評価に取り組んでいます。日本はこの分野でも大きく後れをとっていきました。