他国機関とも緊密に協働

イギリスは、ハニートラップも行った。第二次大戦期にイギリスの協力者として活躍したエイミー・エリザベス・ソープ(コードネーム「シンシア」)は、その魅力で複数の男性外交官を虜にし、彼らから機密情報を引き出した。彼女はワルシャワでポーランド高官の周辺から対独ソ方針を聞き出し、後にはイタリア海軍暗号書やフランス大使館内の金庫にあったフランス海軍の暗号書機密文書を盗み出すという離れ業を成し遂げたとも言われている。

エイミー・エリザベス・ソープ(Underwood & Underwood)(写真:『謀略の技術-スパイが実践する籠絡(ヒュミント)の手法』より)

冷戦期には、MI6は主にソ連・東側陣営に対するスパイ活動を担い、敵陣営内部への浸透や現地協力者の獲得に注力した。

『謀略の技術-スパイが実践する籠絡(ヒュミント)の手法』(著:稲村悠/中央公論新社)

21世紀に入り、テロ対策でもイギリスは重要な役割を果たしている。MI6は9.11同時多発テロ以降、中東や南アジアにおけるイスラム過激派組織への浸透と情報収集を強化、米中央情報局(CIA)など他国機関と緊密に協働してテロネットワークの解体にあたった。

このCIAとの「特別な関係」は、イギリスのヒュミントの特色の一つと言っても良いだろう。中東・南アジア・アフリカなど旧イギリス帝国の地域では、イギリスの経験と人脈が豊富であるため、CIAがMI6の知見に頼る場面も多いとの指摘もある。