(写真提供:Photo AC)
年齢を重ねるとともに「食欲がわかない…無理に食べるのがつらい」「すぐにお腹がいっぱいになるけど、健康のためにもっと食べなきゃ…」と感じるようになった方もいるのではないでしょうか。そのようななか、「小さなコツを実践するだけで、『食べきれる量』でありながら『不足しがちな栄養をきちんと満たす食事』に近づけることができます」と語るのは、管理栄養士で料理研究家の関口絢子さんです。そこで今回は、関口さんの著書『食が細くなってきたら!少食でもちゃんと栄養がとれる食べ方』から一部を抜粋してお届けします。

少食さんは腸内環境が乱れやすいって本当?

少食さんに知っていただきたい「腸」の働きについてご紹介します。

腸の働きは全身の健康に関わる大切なもので、そのメカニズムは、よく畑の土作りにたとえられます。

元気な野菜を育てるためには、「豊かな土壌」が必要です。豊かな土壌とは、多種多様な微生物が共存し、有機物を分解して植物が吸収できる養分に変えてくれる、生命力に満ちた土のことをいいます。

人間の体内に備わる腸内環境も、これと全く同じです。腸内に生息する多種多様な腸内細菌は、食べたものを分解し、ビタミンや短鎖脂肪酸といった大切な栄養素を作り出しています。この働きは、まさに土の中の微生物が植物に養分を与えるのと同じで、とても大切な生命活動なのです。

ところが、この働きを担う腸内環境は、年齢とともに乱れやすくなります。

理由のひとつは、腸内細菌の種類の減少です。腸内環境にとっては、さまざまな菌が共存して助け合う「多様性」が理想なのですが、年齢を重ねると腸内細菌の種類が減って多様性が失われていきます。すると、腸のぜん動運動が鈍くなり、便秘がちになる→善玉菌が減り、悪玉菌が増える、という連鎖が起こります。

また、年齢とともに食事量が減ったり、肉や魚などのたんぱく質をとらなくなったりすることでも、多様な腸内細菌のエサとなる栄養素が不足します。こうした要因が重なり、腸内環境はしだいに「やせた土壌」のようになってしまうのです。

つまり少食さんの多くは、腸内環境が乱れていることを疑ったほうがよいといえます。