それからは稽古場に黒幕を張って、周囲からは見えないようにしてくれて。健一の役は、最初モリーナへの反発から始まって、同調から友情が生まれ愛情まで行って、しまいに男同士でキスしなきゃいけない。
でも、彼は心を開いて「村井さん、大丈夫だからね」「お前、大人か?」って(笑)、偉かったですよ。
それからは何も怖くないみたいになりましたね。あの頃で一番好きだった芝居は、ラクロの『危険な関係』です。こっちはPARCO劇場でデヴィッド・ルヴォーが演出してくれました。
装置も衣装もそのまま全部ヨーロッパから持ってきて、すべてセピア色の濃淡で統一したのが素敵でした。これ、1950年代にジャンヌ・モロー主演の映画がありましたね。それを舞台化したんですけど、僕はジェラール・フィリップが演じた、色っぽいヴァルモン子爵の役でした。あの頃は充実してましたね。