なぜ最高峰を目指すのか

もともと私は、「制覇」とか「挑戦」という言葉は好きではないのです。新聞や雑誌のインタビューを受けると、記事に「未知への挑戦」というような見出しを付けられることが多いのですが、そのたびに、「いやあ、私、そんなんじゃないんですけど」と、首をすくめたくなります。

とはいえ、各国の最高峰を目指すことには、いささかのこだわりがありました。それは、最高峰というものが、「どの山に登ったらいいか」という、一つの目安になるからです。地球はあまりにも広く、世界的に有名な山は限られています。日本に富士山があることは知っていても、槍ヶ岳や穂高岳を知っている外国人は少ないのと同じです。

そこで、まずはその国の最高峰を調べて、そこに登ってみる。すると、ガイドさんが「実は、もっとおもしろい山があるんだよ」と教えてくれます。そして、世界がどんどん広がり、登りたい山が次から次へと出てきます。

※本稿は、『人生、山あり“時々”谷あり』(潮出版社)の一部を再編集したものです。

【関連記事】
田部井淳子 突然のがん告知と余命宣告。「5年生存率3割」という厳しい現実に直面しながらも、さほど落ち込まなかった理由は…
登山家・田部井淳子「エベレストに登頂できたのは登山隊の皆のおかげ。でも、マスコミ報道では私の名前だけが大々的にクローズアップされてしまって…」
田部井淳子「末期がん闘病も人生観は変わらず。身辺を片付けている暇なんか、ない。生きているうちにやりたいことをやったほうがいい」

人生、山あり“時々”谷あり』(著:田部井淳子/潮出版社)

「世界初」の称号と三度にわたる雪崩との遭遇、突然のガン告知と余命宣言、そして東日本大震災の被災地の高校生たちとの富士登山・・・・・・。

女性初のエベレスト登頂を成し遂げた登山家・田部井淳子が綴った、笑いあり、涙ありの感動エッセイ!!!