(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
2016年に逝去された登山家・田部井淳子さんは、女性初のエベレスト登頂を成し遂げたことで知られています。今回は、田部井さんがこれまでの出来事をエッセイとして書きまとめた著書で、2025年10月31日公開の映画「てっぺんの向こうにあなたがいる」の原案本ともなった『人生、山あり“時々”谷あり』から一部を抜粋し、再編集してお届けします。

「登山家」ではなく「登山愛好家」

私は自分のことを、「登山家」ではなく「登山愛好家」だと思っています。

登山家という言葉には、「自分の限界に挑戦し、はるかな高みを目指す人」というイメージがあります。

私も、1975年に女性として世界初のエベレスト登頂を果たしたことから、登山家と見なされるようになってしまいました。

でも、私は、世界記録がつくりたくてエベレストに登ったわけではありません。エベレストは、「一度は登ってみたい、憧れの山」だったからです。