もう一つの原因

中高年世代が山で事故に遭いやすいもう一つの原因は、「自己過信」です。誰しも、自分の老いや体力の衰えを認めたくはない。とはいえ、60代を過ぎてしまえば、20代のときと同じような山登りができないのは当たり前のことです。

私は、20代までは岩登りに夢中でした。30代に入ると海外遠征に出かけるようになり、7000~8000メートル級の山に登るようになりました。

『人生、山あり“時々”谷あり』(著:田部井淳子/潮出版社)

エベレストに登頂したのは35歳のとき。山頂のすぐ下に、ヒラリー・ステップという急峻な岩場があるのですが、そこを登り切ったときには「岩登りをやっていてよかった」とつくづく思いました。

40代に入ると、子育てが忙しくなり、子どもと一緒に山に出かける機会が増えました。キャンプやバーベキューが手軽に楽しめる奥多摩や奥武蔵、上信越の谷川岳や八ヶ岳などに行くことが多かったですね。