歳をとったら無理は禁物

私が自由に遠征できるようになったのは、50歳を過ぎてからのことです。カルチャーセンターで「山歩き教室」を担当することになり、それまであまり縁がなかった国内の里山にも登るように。60代に入ると、夫が定年退職したこともあり、いつでも行きたいときに山に行けるようになりました。思い立ったが吉日で、天気予報を見て二人で計画を立て、北アルプス縦走に出かけるといった具合です。

とはいうものの、さすがに60歳の坂を越えると、若いころと同じようには行きません。疲労回復に時間がかかるようになり、膝のバネも衰えました。踏ん張りがきかないので、ちょっとした段差を登るだけでもバランスを崩してしまいます。

田部井淳子
北アルプスにて(写真:『人生、山あり“時々”谷あり』より)

歳をとったら無理は禁物。登りやすいルートを選び、時間も余裕を見たほうがいい。雨に降られたら、山麓の温泉で一日待つぐらいの余裕が欲しいところです。

そして、帰りの新幹線の指定券は買わないこと。「何時までに駅に着かないと、切符が無駄になる!」と、やきもきしてしまいますから。イライラと時計ばかり気にしているようでは、せっかく山まで来た甲斐がありません。安全第一を心がけ、余裕のある計画を立てていただきたいものです。