(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
2025年10月、ウィーン国立歌劇場が9年ぶりに来日公演を開催するなど、日本でも人気が高まっているオペラ。ヨーロッパ最高の娯楽・教養であるオペラとは、どのようなものなのでしょうか?今回は、歴史ライター・内藤博文さんの著書『教養が深まるオペラの世界』から一部を抜粋し、奥深い名作オペラをわかりやすく解説します。

「フィデリオ」とナポレオン

──なぜ、ベートーヴェンのオペラ創作は1曲で終わったのか

「フィデリオ」(ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン)
初演1814年 ウィーン ケルントナートーア劇場
全二幕 およそ2時間10分

オペラ作曲家としては、超一流になれなかったベートーヴェン

世界最高峰の作曲家というと、ベートーヴェンかモーツァルトの名がよく挙がる。かつてはベートーヴェンは断トツだったが、ひところからモーツァルトが肉薄するようになった。ただ、もしベートーヴェンが4~5作、オペラの傑作を残していたら、ベートーヴェンはモーツァルトの及びもつかない無双の作曲家として認められ続けたのではないか。

逆にいうと、ベートーヴェンはオペラ作曲ではうまくいかなかった。モーツァルトには及ぶべくもない。この一点で、ベートーヴェンの完璧性が損なわれているのだ。