カウンターの接客術が充実して
潮目が変わったのは2011年の東日本大震災以降だと感じています。都心からぱったり人がいなくなり、住宅街の近所にある小さな店に客が集まりだしました。有名店も資金繰りが苦しくなり、スーシェフ(副料理長)たちが独立せざるを得なくなりました。結果、10坪程度のワンオペや夫婦で営むカウンターレストランがどんどん増えていったのです。
2012年、代官山にオープンした掛川哲司シェフによるカウンター主体のフレンチ「アタ」の大ヒットにより、どんなジャンルでもカウンターってアリなんだという認識が生まれたのも大きいと思っています。
このように、客との距離感が近くなり、店側のコミュニケーション能力がより問われることになった結果、サービスの大切さが再認識されるようになりました。
2012年に発売された『東京最高のレストラン2013』でも、巻末座談会で「東京最高のサービス人は誰だ」というテーマで特集を組んだほどです。改めて読み返したのですが、この時点では“これからようやく、サービス人に注目が当たるのでは”といった論調でした。ほんの十数年前はまだまだ地位が低かったのです。