優れたサービス人は得てして“人たらし”
このような成功例が身近にあると、サービスを志す人も増えてくるのではないでしょうか。
そしてサービスというのは個人ではなくチームプレイでもあります。これが上手な店は多少スタッフが入れ替わっても揺らがないし、モチベーションが高くなるから辞めません。歴史あるお店では「エリオ・ロカンダ・イタリアーナ」や「ピアットスズキ」がそうですし、明確にチームを標榜する「傳」はお店全体で楽しさを表現してくれています。
優れたサービス人は得てして“人たらし”です。ただ、これは以前、堀江貴文さんが強く言っていたことでもありますが、卓越したコミュニケーション能力というのは、大人になって訓練したからといって、身につくものではありません。有名な心理学の実験でも明らかになっているのですが、パーソナリティは遺伝子と外的環境によって、ほぼ思春期を過ぎる頃までに決定するようです。
ですから、もし気になるサービス人を見つけたら、彼や彼女から目を離さないほうがいいでしょう。
現代のようにカウンターワンオペで、シェフが料理も接客もこなさなければいけないというのは本当に大変です。おいしい料理が作れる技能とコミュニケーション能力はまるで違うジャンルですから。
ただ、接客は不器用だけど素朴な料理が忘れがたい、だったり、逆に料理は普通なんだけど、あのシェフと会うと元気になるなど、お店の評価基準は人それぞれ。
いい出会いがあればなによりです。
※本稿は、『50歳からの美食入門』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『50歳からの美食入門』(著:大木淳夫/中央公論新社)
食べ歩き歴30年、シェフが絶大な信頼を寄せるグルメガイド『東京最高のレストラン』編集長が教える、中高年のための外食入門。
「ひとりで楽しむ」「高級店、予約の取れない店じゃない店の楽しみ」「慣れて見えるオーダー手順」「サービス人とのコミュニケーション」「カウンター鮨の心得」「会食の店を選ぶコツ」――すべて教えます。




