あえて「レストラン道」があるとすれば
店を楽しむ名人になる
「レストラン道」というと大仰ですが、せっかくですからこれから数十年、美味しい食事を楽しむための目標を立ててみませんか? 学校でも社会に出てからも、計画を立てましょうとか、予算必達! などとさんざん言われてきたとは思いますが、それとは別です。
人生を謳歌するための目標は「お店を楽しむ名人になる」です。
名人とか達人のような道を究めた人って、いつも笑顔で包容力がありますよね。あんなイメージでレストラン道を進みましょう!
では早速、具体的にどうするかです。小山薫堂さんの名エッセイ「一食入魂」はご存じでしょうか。私は書籍『随筆 一食入魂』(2004年/ぴあ)の編集を担当したのですが、小山さんはあとがきでこう記してくださいました。
「自分はおいしいものが食べたくて、日々、店を探しているのではない。いい時間を過ごしたくて、いい店を求めているのだ。いい時間とは、料理人の思想を知ることであり、友人と楽しい会話をすることであり、自分自身に人生を問いただすことである。つまりそれが、人間の原料となるのかもしれない。」
求めるのはこの境地です。いい時間を過ごすためにといっても、高い店ばかりに行く必要はありません。小山さんはこの本の中でひたすら食べ歩きますが、お弁当やアイスクリームにも感動しています。大事なのは「どんな時も食べることを楽しもう!」という、自分の意志と好奇心です。そうすれば、100円のお菓子とだって真剣に向き合うことになります。
私も特に予定がない昼や夜、仕事をしながら食事の1時間くらい前から脳内でマップを開き、ひたすらシミュレーションをしています。まず、お前はどこに行きたいんだ、何を食べたいんだと自分に問いかけます。すると「そういえばあの餃子がまた食べたいな」とか、「今日はグラスワインの安くてうまい店で、とことん飲みたい!」なんて目的が定まってきます。ターゲットを目指してぐるんぐるんと情報が頭を駆け巡り、仕事のふりをして端末を叩いて確認をし、入魂の一食を探すのです。