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オシャレや趣味、友人とのおしゃべりを楽しめない……。それはもしかしたら認知症グレーゾーンかもしれません。早めの対策で引き返せる可能性はある、と専門医は話します(構成:野本由起 イラスト:霜田あゆ美)

前編よりつづく

刺激にあふれた生活で脳を活性化

残念ながら、現時点では認知症を根本的に治す方法は見つかっていません。だからこそ、まだ引き返せる可能性のあるグレーゾーンやその前段階で認知機能の改善を試み、予防していくことが大切なのです。

認知症は、遺伝的な因子を持つ人を除くと、生活習慣が大きく影響するもの。ですから、日々の生活の見直しが必須です。具体的には、「脳の活性化」「運動」「食習慣と睡眠習慣の改善」の3つを行っていきます。

まず1つ目の「脳の活性化」のために、ワクワクに満ちた豊かな毎日を過ごすことを心がけましょう。それだけでいいの?と思う人もいるかもしれませんが、刺激にあふれた生活には、脳の神経伝達物質である「やる気や幸福感を生み出すドーパミン」「愛情の源となるオキシトシン」「心を癒すセロトニン」の分泌を活発にする効果があるのです。

その証拠に、国立長寿医療研究センターが40~82歳の2205人を10年にわたり追跡調査したところ、「好奇心が強く、新しいことに挑戦するのが好きな人」は、言語能力、理解力、社会適応力、コミュニケーション力などの知的な能力を維持できるという結果が出ています。

刺激にあふれた生活と真逆にあるといえるのが《孤独》です。記憶や意欲を司る「背外側前頭前皮質(はいがいそくぜんとうぜんひしつ)」、新しい記憶が保存される「海馬」、感情をコントロールする「扁桃体」などの脳の部位は、人との触れ合いによって活性化するもの。孤独な生活を送っている人の脳では、それらの部位の萎縮が確認されていることからも、他者との交流によって得られる刺激が重要だということがわかるでしょう。