おかしなことには気軽に声を上げていい
ここ数年、日本の40~50代、いわゆる就職氷河期世代の女性作家が書いた小説がイギリスなどヨーロッパで人気です。同じ賞にノミネートされた柚木麻子さんの『BUTTER』をはじめ、村田沙耶香さんの『コンビニ人間』などがヒットしていたため、私の作品もタイミングよく、その波に乗れたのだと思います。
あくまでも臆測ですが、日本の女性作家による小説が海外で読まれているのは、私たちの社会が欧米の人の目に奇妙に映っているからではないでしょうか。どの国にも女性差別や男女格差はあるのでしょうが、それにしたって日本は特殊。
大学の医学部入試における女性差別が明るみになった時、私も抗議デモに参加しましたが、規模はとても小さかった。逆に、デモをしている私たちを揶揄する声のほうがずっと大きかったのを覚えています。
ジェンダーギャップ指数が先進国最下位にもかかわらず、日本人はいまだ声を上げない。令和になっても女性議員の数は少なく、男性議員からはとんでもない女性差別発言が次々に飛び出してくる。
そんな社会の中で、女性が暴れる『ババヤガの夜』のような小説が出版されたわけですから、「大変そうな国で、しかも就職難世代の女性がこんな物語を書いている!」と、珍しがられたのかもしれません。
確かに、日々の生活を回していくだけで精一杯で、怒る気力が湧かないのもわかります。「何を言っても無駄」と学習性無力感に苛まれている人も多いでしょう。でも、「これは変だな」と思うことがあったら「変だ」と言うだけでも、社会の変化に繋がるはずだと信じています。
これまでいろいろなジャンルの小説を書いてきましたが、次にどんなものを書くのかは着手するまで自分でもわかりません。落語の演目「素人鰻」で言うところの、「行き先は鰻に聞いてくれ」状態です(笑)。バイオレンス小説、ヒューマンドラマなどとジャンルを限定せず、これからもその時々で書きたいものを書いていけたらと思います。





