詩人の谷川俊太郎さんが、2024年11月に92歳で他界されました。その活動は多岐にわたり、詩作のほか、児童文学の翻訳、アニメ『鉄腕アトム』主題歌の作詞なども手がけ、作品は多くの人に親しまれています。娘の志野さんが親子の貴重な思い出を語りました。(構成:篠藤ゆり 撮影:洞澤佐智子)
「みんなが喜んでくれる詩を書きたい」
私は15歳からアメリカ暮らし。アメリカで「父は詩人です」と言うと、皆さん驚かれます。そして次に、異口同音に「生活はできてるの?」。やはり洋の東西を問わず、詩で食べていける人はそうそういませんから。
上の娘がニューヨークの友だちに頼まれて、俊太郎さんにインタビューをしたことがあって。私も同席したのですが、「どうして詩人になったの?」と娘が聞くと、「それしかできることがなくて、詩を書かなければ家族を食べさせていけないから」と答えたので、ちょっとびっくりしました。
詩人はもっとアーティスティックな内面からの欲求で詩を書くのかと思ったら、家族を食べさせるため、とは! 私は知りませんでしたが、兄にはよく「僕は職業詩人だから」と言っていたそうです。