日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「大老」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!
怒りを爆発させた定信
前回の「べらぼう」では、大老になれるものと考えてロシアとの交渉をまとめた老中・松平定信が、結果的に将軍・徳川家斉や一橋治済らの罠にはまり、失脚へと追い込まれる場面が描かれました。
血走った眼で「地獄へ落ちるがよい!」と言い放った定信の迫力に圧倒された一方、この先のドラマの展開がまったく読めず、一視聴者としては楽しみな限りです。
あらためて同回を見てみると、前半での榎木孝明さん演じる徳川宗睦と定信のやりとりの中で「大老に就任するのは井伊、土井、酒井、堀田の四家に限られる」といった説明が出てきました。
歴史を勉強する者としては、この表現がどうにも落ち着きません。なんだか違和感があります。今回は、その違和感を言語化するとどうなるか、チャレンジしてみます。
