最高の役者たち

さて、今回久しぶりに本作を見て、冒頭の出会いのシーン。階段下からスカーレットを見つめるレット・バトラーの流し目に、心臓が躍った。演じたクラーク・ゲーブルはすでに「キング・オブ・ハリウッド」。彼は貧困家庭に生まれ、16歳で工員として自立。演劇を志してからは「後家殺し」な恋愛力で、年上女性と2度の結婚と離婚。逆援助交際状態を活かし、スターへの階段を昇り詰めた。『風と共に去りぬ』公開年には、女優のキャロル・ロンバード(やっと年下)と3回目の結婚。この時期が彼のキャリアも人生も絶頂期であるから、その色香が半端ないのも頷ける。

そんなゲーブルに負けない強烈な魅力を発揮したのが、スカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リー。彼女はインドの新興成金の両親のもとに生まれ、全てを与えられて育った。ゲーブルとは対極の生い立ちだ。しかしその美貌と演技への情熱は本物。スカーレット役を勝ち取るため、自らアメリカに足を運んで売り込みをかけたというから、「ほしいものは、手段かまわず手に入れる」スカーレットそのものの性格、はまり役だ! 

脚光を浴びても、「自分は映画スターなんかではなく女優」と浮かれず、演劇界の重鎮・ローレンス・オリヴィエと結婚。その後、双極性障害に悩まされながらも、舞台や映画に真摯に取り組み、今でも「世界のトップ女優」ランキング入り。美女なだけでなく、努力の人なのだ。気まぐれだったようだが。

兎に角そんな最高の役者が揃い、それぞれの性格が役柄とびたりと合った奇跡のような映画が、この『風と共に去りぬ』なのだ。やがてテレビの普及で衰退を始める前の、絶頂期のハリウッド・パワーを楽しんでほしい。

古典的なカメラワークや、やや誇張された表情の、演劇的な細かい芝居も見どころだ。