お父様の映像は映画館でご覧になるのですか? お母様もご一緒に?
――はい。当時、フィルムセンターというのが京橋にあり、母と一緒によく行きました。母も見たかったんでしょうね。僕も親父の姿を求めていたんでしょうけど、見てもわからないんですよ。
たとえば『君の名は』みたいな色っぽい作品で恋愛する姿を見ても、父だとは思えない。逆に『喜びも悲しみも幾歳月』で老いていく父を見て、あれが親父なのかな、って思ったり。小津安二郎先生の作品に出ている父が、一番自然で父らしい感じはしましたけどね。
『君の名は』を見た後で、母に「親父はなんであの人(岸惠子さん)と結婚しなかったんだろう」って訊いたら、「あの人と結婚してたら、あなたなんて生まれてこなかったのよ」って。今思うと母に失礼でしたね。(笑)
父が亡くなった途端に芸能界との関わりはパタッとなくなりました。ただ、俳優の笠智衆さんと三井弘次さんは、毎年8月17日の父の命日には必ずお参りに来てくださって。
映画界の方とお会いするのはそれだけでしたので、将来自分が俳優になるなんてことはまったく考えもしませんでしたね。

